あまりの冷たさに、その手が
感覚を失いそうになった時・・・
携帯の振動が走った。
警察からだと思い、ディスプレイを覗き込む。

・・・彼だ!!

「・・・もしもし。」
元気のない声だが、間違いなく彼の声だ。
聞いた瞬間、ホッと安心したが、
「もうっ!どうしたのよ!
心配させないでよ!」
今までのすべての思いを吐き捨てた。
「え〜?」
彼は、何のことだかよく分からない、というように
間抜けな声をあげる。
「さっきさ〜、警察とかいうところから
電話がかかってきたんだけど〜・・・」
この世の何よりも、警察が嫌いな彼だ。
元気のなさに、不機嫌さが混じっている。
「当たり前じゃん!もう心配で心配で、
110番に電話したんだよ!」
あたしにこれだけの心配をかけておきながら
「あなた、俺のメール、どこまで読んだの?」
と、特に悪びれるふうもない。
「薬飲みすぎて、眠いっていうメールまで・・・」
「じゃ、その次のメール、読んでないの?」
「だって、届いてないもん。」
「じゃ、チェックしろよ。」
何だか逆ギレされてるみたいな気分になった。
「J-PHONEは、自分の携帯に届くまで
見られないんだよ。自分からサーバに
アクセス出来ないもん。」
「仕方ねぇなぁ、もう一回送るか。」
そこで電話がブチっと切れた。
しばらく待つと、メールが来た。

「あ、薬って、鎮痛剤。」

無性に、腹が立った。
・・・あたし、何のために
こんな寒い中、こんな時間に
玄関の外なんかに立ってるんだろう!!
馬鹿らしくなった。
さっさと家の中に入り、
さっき脱ぎ捨てたパジャマをもう一度着て、
ベッドの中にもぐり込んだ。
そのくせ、携帯を枕元に置いていた自分が
何となく、許せない気もした。
案の定、すぐに携帯が鳴り出した。
あたしは、出る気がしなくて無視した。
留守電に切り替わって、電話は切れた。
すぐにまた鳴り出した。
それでもあたしは無視した。
再び電話は切れ、そして再び鳴り出す。
あたしの目から涙が溢れた。
そして、4度目に電話が鳴った時、
あたしはついに電話口に出た。

(第3章に続く)

コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索