彼が、いきなりあたしに
「お金貸して!」って言ってきた本当の理由は、
他にあるような気がする。

第一、彼は、あたしがお金に困っていることを
この世でいちばん分かっている人だ。
2、3万だってきついってこと、
十分承知のはずだ。
そんな彼が、平気であたしに
お金貸してくれって言うとは思えない。
よくよく考えてみたら。
あたしなんかに頼むより確実な方法は
彼にはたくさんあるはずだ。

実は彼はこの前、会ったあとも
ずっと東京にいたらしい。
どうやら、こっちでやる仕事が残っているらしく
行くに行けない状態のようだ。
しかし、7日は絶対に山形に
打ち合わせに行かなければならない。
そのためのお金がない、とのことだった。
だから彼は「6日までに。」と言っていた。
それで今日の18:00に渋谷で待ち合わせて
渡す予定になっていた・・・

しかし今日の朝になって
「やっぱり無理かも。」とメールが入る。
電話くれ、ということだったので
すぐに電話をした。
きっと急な仕事が入ったのだろう。
恐らく、銀行口座にでも
振り込んでおいてくれっていうことに
なるだろうと予想していた。

ところが、あたしの予想とは
全然違う方に話は進んでいった。

彼が言うには、
「渋谷で18:00に会ってすぐ別れても
家に着くのは20:00過ぎ。
次の日は山形に5:00のバスで行くから
3:00には起きなきゃない。
帰ってからもいろいろやることあるから
時間的にきつい。」とのこと。
・・・あたしは思った。
もし、本当にお金が必要だったら
何が何でも受け取ろうとするはずだ。
「それで・・・大丈夫なんですか?」
あたしは恐る恐る聞いてみた。
「ああ、7日は何とかする。」
彼が早口で言った。

・・・やっぱりあたしは
彼を助けることが出来なかった。
あたしの力では、彼を救うことが出来なかった。
自分の力のなさを悔やんだ。

その時。

「金曜日辺りどうかなぁ、
21:00とか22:00辺りにどっかで会えない?
いや、ホントは水曜日に借りて
金曜日に返そうかなって思ってたからさ。」

あたしは耳を疑った。

彼は、7日の分の資金を他から調達する。
だからあたしは用なしのはずだ。
金曜日に会わなければならない理由がない。
何か他の理由で日帰りで
東京に帰ってくることがあっても
あたしに会う必要はどこにもないはずだ。

なのに、何故・・・?

そう考えているうちに
ひょっとして彼は始めっから
あたしに本気でお金を借りる気なんて
なかったのではないか、という
気がしてきた。
いや、これはあたしの勝手な
思い過ごしなのかもしれないが
けれどどうしてもつじつまが合わない。
やっぱり彼は、こっちにいる間に
少しでも多くあたしに
会ってくれようとしてくれているのでは・・・?

この答えは、金曜日に分かるのだろうか。


コメント

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

まだテーマがありません

この日記について

日記内を検索